専任技術者(営業所技術者)が突然辞めたらどうなる?許可を維持するための緊急対応ガイド

建設業許可を維持する要件の中でも、経営業務の管理責任者と同様に「人」に依存し、一瞬の隙も許されないのが専任技術者(営業所技術者)の存在です。

もし、御社の専任技術者(営業所技術者)が突然退職してしまったらどうなるでしょうか。「2週間以内に届け出れば大丈夫」という誤解が、会社を倒産の危機に追い込むかもしれません。

1. 「1日の空白」が許可取り消しに直結する

専任技術者(営業所技術者)は営業所に「常勤」していることが絶対条件です。「2週間」というのはあくまで「変更届」を提出するための期間であり、技術者が不在でいい期間ではありません。

法的には、前任者の退職日と後任者の着任日の間に「1日」でも空白があると、その瞬間に許可要件を欠いたことになります。

2. 「辞める前」に後任を着任させるのが鉄則

実務上のリスクを回避するためには、前任者が辞めた翌日に後任を充てるのではなく、「前任者が在職しているうちに、後任者を専任技術者(営業所技術者)として着任させる(変更届を提出する)」のが最も安全です。

退職直前は引継ぎなどでバタバタし、書類の準備が遅れるリスクがあります。「辞めてから探す」のではなく「辞める前に揃えておく」ことが、許可を死守するための鉄則です。

3. 中小企業が取るべき最強の防衛策:経営者の資格取得

営業所が一つだけというような中小企業の場合、従業員だけに専任技術者(営業所技術者)を頼るのは大きな経営リスクです。そのスタッフが辞めた途端、会社の看板である「許可」が消失してしまうからです。

最大の防衛策は、「経営者自身が専任技術者(営業所技術者)の要件を満たすこと」に尽きます。

実務経験がある場合:

過去10年分の注文書や請求書等の必要資料を整理し、いつでも自分を登録できる準備をしておきましょう。

実務経験が不足している場合:

至急、国家資格を取得することをお勧めします。 指定の資格があれば、実務経験が短縮(または不要に)なり、経営者自身が技術的支柱となることで、従業員の離職による許可失効リスクをゼロにできます。

4. 専門家と共に「バックアップ体制」を築く

「誰が後任になれるか」「実務経験の証明書類は足りているか」を、緊急事態になってから確認しても間に合いません。

行政書士などの専門家と平時から連携していれば、経営者自身の資格取得プランの作成や、社内スタッフによるバックアップ体制のシミュレーションが可能です。「万が一の際も、空白期間を作らずに手続きを完了させるための準備」を整えておくことができます。


まとめ:許可は「人」についている

建設業許可は会社に与えられるものですが、その実態は「専任技術者(営業所技術者)」という個人に支えられています。

「2週間の猶予」を「探し回る時間」と勘違いせず、前任者がいるうちに後任を立てる。そして経営者自身が要件を満たす努力を怠らない。この二段構えの準備こそが、御社の許可と信用を末長く守る道です。